ミュージカル苦手?でも、思わず体がリズムを刻むことありますよね?

ミュージカル映画というと、古い名作というイメージをお持ちの方も多いと思います。確かに、その歴史は古く、かなり前から作られており、そのものが映画史といっても過言ではありません。

そして、その中には日本人にはなじめない異文化の世界観もあります。男尊女卑という暗い文化を背負ってきた日本人にとっては、なおさら理解できない文化でもありました。

ミュージカル映画は、女性や子供の映画と捉えられ、男性から敬遠されていました。しかし、その内容は男性が女性に対して愛を訴えるものであったり、女性を導くものであったりします。そして、男性の悲哀を歌で表現するなど、男性の主演も多いのです。

またお子様と一緒にご覧いただくと、子供たちのリズムに対する自然な反応を楽しめることができます。映画が分かるとか、分からないとか、子供たちはそんなことを考えません。音楽を楽しむ本能を素直に表現してくれます。

また、大人だと口ずさみたくても英語の歌を口ずさめずに敬遠することもあるでしょう。しかし、口ずさまなくても、体が自然とリズムをとるだけでも、その映画を観る価値はあります。むずかしいイメージを払いのけ、自然と楽しめるミュージカル映画を、ぜひご覧ください。

どこの国でも、祭事があります。そして、それら祭事には音楽はつきもので、踊り、ダンスが伴います。実は身近に音楽とダンスはあるのです。ミュージカル映画も、もっと身近に感じてもいいのではないでしょうか。

名作とは他人が勧めるのではなく、自分で判断するもの

また、ミュージカル映画には、名作と呼ばれる作品が多いですよね。しかし、そのことが逆に若い人がとっつきにくくなっているのでないでしょうか。『名作』=『重い映画』というイメージが、余計に若い人を遠ざけているのかもしれません。

他者から押しつけられた、『名作』ではなく、各自が心に残る映画こそが、その人にとっての『名作』といえるでしょう。今までミュージカル映画を敬遠して人たちも、ぜひ、ご自分の中の『名作』を探してみてください。

そこで、今回は昔からある、いわゆる『名作』の紹介は後半にお伝えすることにし、前半では、あえて若い人向けのノリのいいものをご紹介したいと思います。ライトな気分で「ミュージカル映画って、こんなノリなんだ!」と思っていたけでばいいでしょう。

映画通に方にとっては、「なぜあの映画を紹介しない?」、「なぜこんな映画を紹介するのだ?」など、ご意見もあるでしょう。しかし、どこでも紹介されている、いわゆる『名作』ばかりではなく、変わり種のミュージカル映画もご紹介し、よりミュージカル映画に興味を持っていただこうと思います。

また、ハリウッドスターの中には「えっ?この人もミュージカルに出ていたの?」という人が多いのも驚かされると思います。普段は悪役だったり、アクションばかりやっているイメージの俳優が、画面いっぱいに歌を歌う姿を観て、驚かされます。

そう、一流のハリウッドスターは、歌唱力、リズム感も一流なのです。その辺りの情報も交えて、ミュージカル映画の世界を紹介していきたいと思います。最後までお付き合いください。

世界で最も幸せなミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』

『ドレミの歌』、『私のお気に入り』、『エーデルワイス』など、全編にわたって数々の名曲が綴られる映画史の残る名作ミュージカル映画です。アカデミー賞において、作品賞、監督賞、編集賞、編曲賞、録音賞の5部門でオスカーを獲得しました。

学校関係で教材として試写されることも多い作品ですが、音楽、歴史、美しい風景、人間愛などを吸収しやすい小学校で鑑賞する機会を多くして欲しい作品です。

ため息が出るほど美しいアルプスの風景をバックに名曲を聴いていると、これだけで十分癒やされます。それに加えて、激動の歴史を背景にスローな恋愛模様を描くことで、何世代も受け継がれるべく名作となりました。

辛いこと、悲しいことがあったとき、この映画を観れば、すべて忘れてしまいそうな、明るく元気の出る作品ですので、ご家族そろって楽しんでいただきたいです。

派手なアクションや、特撮CGが素晴らしいSF映画もいいけれど、ときには心が元気になるこのような映画もおすすめです。ミュージカル映画ってやっぱりいいなぁ、と思わせる作品です。

監督は『ウエストサイド物語』のロバート・ワイズ監督。『ウエストサイド物語』と本作で、ともにアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞しています。その後も、『アンドロメダ』、『スタートレック』などのSFなども手がけたハリウッドで最も素晴らしい監督の一人です。

主演は、もともとは舞台女優だったのですが、ウォルト・ディズニーがなんとしてでも『メリーポピンズ』で、起用したかったといわれるジュリー・アンドリュース。映画デビューでいきなりアカデミー賞主演女優賞を獲得した実力派女優です。

舞台は、1938年のオーストリア、ザルツブルク。トラップ家は、7人の子供たちに対して古風で厳格な教育方針を掲げています。父親のトラップは、数年前に妻を亡くしてしまいました。そのため子供たちの面倒をみるために家庭教師を雇うのですが、元気いっぱいの子供たちはやんちゃ盛りで、どの家庭教師も長続きしません。

そこに修道院の院長の命を受けて、修道女のマリアが家庭教師としてやってきます。早々にカエルのいたずらを受けたりしますが、マリアはそれを歓迎の意として受け止めるのでした。
彼女の温かい人柄、音楽や歌を歌うことの素晴らしさを伝えるなど、子供たちはすぐにマリアのことが好きになっていきます。しかし、父親のトラップはマリアの教育姿勢に納得がいかずに、衝突が絶えません。

ある日、マリアは子供たちが軍服のような服を着ていることを不憫に思い、部屋のカーテンを使って遊び着を作り、山に遠足に出かけます。そこで、子供たちがいたずらをする理由をたずねます。子供たちは父親の気を引きたかったからだったのです。

そこでマリアは、子供たちに歌を歌って父親の気を引くことをすすめるのですが、子供たちは知っている歌がないことを知って驚くのでした。マリアは子供たちにドレミの階名を教え始めるのでした。

ところが、マリアは自分がトラップに惹かれていることに気づくのでした。思いを抱いたまま悩んでいるマリアでしたが、トラップの再婚話が持ち上がり、心の内を伝えることができないまま、修道院に戻ります。

3時間という上映時間ながら、それを感じさせない素晴らしい脚本で、最高のミュージカル映画といって過言はありません。

土砂降りの中、ジーン・ケリーが歌って踊る『雨に唄えば』

この映画自体を観ていなくても、大雨の中で黄色いカッパを着てダンスをするシーンは、観たことがあるのではないでしょうか。『トップ・ハット』、『巴里のアメリカ人』などの代表的ミュージカル映画の傑作の一つがこの『雨に唄えば』です。

映画界の時代の変遷を描いたコミカルなミュージカル映画で、ハリウッド映画を代表する名作の一つです。特に大雨の中、主人公のジーン・ケリーがタップダンスを踊るシーンは、映画史に残る名シーンとして今でも色あせることがありません。

アメリカ映画協会が選んだミュージカル映画ベスト第1位に輝いています。主題歌はアメリカ映画主題歌第3位に選ばれており、映画そのものはアメリカ映画ベスト100において、第10位という輝かしい結果を残しています。文句なしの名作といえるでしょう。

経営学者のジョーン・マルケスは、この映画を鑑賞し、「雨を嫌うか、雨の中で踊るか、私たちは選択することができる」とし、困難な時期をすばらしい経験に変えることが人生において大切な技術であると説いています。

映画監督のメル・ブルックスは「天国のように素晴らしい。ミュージカル映画史上最高作品だ」と絶賛しており、この映画がいかに素晴らしく、後生に影響を与えているかわかります。その証拠に、映画『ザッツ・エンターテインメント』の冒頭では、この曲が紹介されるほどです。MGMミュージカル作品の象徴的な曲になっています。

主演は『踊る大紐育』、『巴里のアメリカ人』など多くのMGM作品で主演を務め、ハリウッド映画の黄金時代を築いたジーン・ケリーです。1952年には、アカデミー賞名誉賞を受賞しています。(同年には黒澤明監督も名誉賞を受賞しています。)

映画界はサイレント映画が花盛りの1920年代はアメリカそのものにとっても黄金期であった。ジャズやミュージカルなど、20世紀を代表する文化が生まれた時期でもあります。しかし、テクノロジーの進化はいつの時代にも文化にも反映します。

俳優のドン(ジーン・ケリー)と女優のリナ(ジーン・ヘイゲン)は、映画界のドル箱スターでした。やがて、世界で初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』が大成功を収めると、ハリウッドにも当然のようにトーキーの波が押し寄せます。

そこで映画製作会社は、ドンとリナを主演にした作りかけのサイレント映画を無理矢理トーキー映画にすることにします。ところがリナの声があまりにイメージとかけ離れていて、試写会は失敗に終わります。そこで、ドンの親友コズモが、リナの声を別人キャシーの声に吹き替えるアイディアを出したのです。

しかし、それを知ったリナは嫉妬と怒りでキャシーを表舞台に出られないように契約させます。やがて映画が完成し、試写会が催されます。ドンとリナの歌声に感動した観客は拍手喝采を惜しげもなく浴びせるのですが、思わずリナは自らの声でスピーチをしてしまいます。

あまりの声の違いに観客からリナへ、この場で歌を歌うように迫られ、リナはキャシーをカーテンの背後に隠して、観客の前で口パクで歌い始めるのですが・・・。

大手デパートなどでは、雨が降り出すと『雨に唄えば』のBGMを流すところもあるそうです。もしかしたら、日常で耳にしているかもしれませんね。

幸福に必要なのは、その時その時の小さな愛情『シェルブールの雨傘』

1964年製作のフランス映画、ジャック・ドゥミ監督、ミシェル・ルグランが音楽を担当しました。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しています。この映画もミュージカル映画を語る上では、外すことのできないスゴイ作品です。

題名を見ても、スゴイ?とは思わないですよね。内容も男女の恋愛を謳った、よくある恋愛ストーリーです。では、なにがスゴイのでしょう?実はこの映画セリフが全くないのです。一般的なミュージカル映画とは、演技の中に音楽を挿入し、歌を奏でます。

しかし、本作は全編が音楽のみの完全なミュージカルです。出演者も多く、エキストラもたくさん使っていますが、全員セリフはありません。すべて歌と音楽で表現します。だから、キャストは歌を歌うことはプロではないので、すべて吹き替えとなっています。

色とりどりの傘をもつ人々を俯瞰的に見下ろすオープニング・シーンは幻想的です。様々なパステル調の色華やかな傘が人々の個性を表しているようで、この映画はきっと恋人たちの幸せを描いた素敵な恋愛ドラマなのだろう、と思わせます。

しかし、その内容は悲しく重いものとなっています。相思相愛の傘屋の娘と修理工の若者が、戦争によって引き裂かれていく悲劇をミュージカルで描きました。思えば、オープニングのシーンでこの物語の方向性を訴えていたのかも知れません。

一見、色鮮やかな美しい傘は、思い思いの方向に進みます。実はこれは、これから起こる登場人物の人生を案じているではないでしょうか。

とにかく全体に美しい映画です。もう50年以上も前に製作された作品ですが、色調の使い方が色鮮やかで、悲しい場面でも、劇中に登場するものすべてが色鮮やかなのです。

主演のキュートなジュヌヴィエーヴ・エムリを演じるのは、子役時代から映画に出演していたカトリーヌ・ドヌーヴ。本作で世界的大スターの座をつかむことになります。とにかく可愛いカトリーヌ・ドヌーヴが歌って踊る魅力にあふれた姿に心酔することでしょう。

舞台は、フランス北西部の小さな港町シェルブール。傘屋の娘ジュヌヴィエーヴは稼ぎが少なく貧しい家庭に育ちます。それでも、自動車修理工のギイに恋をし、幸せの真っただ中です。しばらくは、若い二人の甘い恋の時間が描かれます。

当然のように二人は永遠の愛を誓い合います。しかし、そんなギイへの徴集礼状が届くのです。ギイは兵役に行かなければなりません。二人は、ギイの出兵前夜に結ばれます。しかし、誓った永遠の愛も、日々の生活の中では色あせてゆきます。

いつしか二人は時代の波に翻弄され、別々の人生を歩むことになります。それから数年後二人は再会します。そして、ラスト・シーンの「幸せ」という言葉の男女の意味に取り合いも深く考えさせられます。

ジャック・ドゥミ監督の「幸せ」とは、永遠の愛ではなく、まさにその時、その時に生まれる小さな愛情のことであり、空から降ってくるような小さな雨粒のようなものなのかもしれません。

ダンス!音楽!永遠の青春!『ウエスト・サイド物語』

キャッチコピーは、『ダンス、音楽、永遠の青春・・・すべてのエンターテインメントの歴史がここに!』1961年の作品ですが、どの時代に観ても若い人から感銘を受けることができる有名なミュージカル映画です。アカデミー賞では、作品賞、監督賞をはじめ10部門を受賞した正真正銘の最高傑作です。

日本においても、本作は大ヒットし、『ベン・ハー』を越える記録的興行成績を残し、配給収入は13億円となりました。劇中で『トゥナイト』、『アメリカ』、『マンボ』、『クール』、『マリア』など、歌われた曲も多くサウンドトラック・アルバムが世界中でヒットしました。今でも愛され続ける名曲ばかりです。

監督はロバート・ワイズとジェローム・ロビンスの両監督。ロバート・ワイズは、その後『サウンド・オブ・ミュージック』でも、アカデミー賞監督賞を受賞しています。

主演は、ジェームズ・ディーンの『理由なき反抗』で、アカデミー賞助演女優賞を受賞したナタリー・ウッド。本作『ウエスト・サイド物語』で大スターの仲間入りをしました。

そして、もう一人の主演はリチャード・ベイマーです。しかし、彼は本作の後は、作品にめぐまれず目立った活躍はしておりませんが、1990年にテレビドラマ・シリーズ『ツインピークス』で復帰したときに、すっかり風格ある姿でファンを喜ばせました。

日本では、主演の二人よりも助演のジョージ・チャキリスの方が人気が爆発しました。親日家でもあり、日本でのドラマ出演や舞台出演などもありました。甘いマスクが日本の女性には好みだったようですね。彼は、本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

移民による人種の差別問題に重点を置き、縄張り争いを行う凶暴化する若者たちの世相など、当時のアメリカが抱えていた社会問題をミュージカル映画で描いた問題作です。この後の若者たちのグループ映画に多大に影響を与えました。

アメリカ、ニューヨークのウエスト・サイドには白人系のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団という不良少年の二つのグループは、屋上運動場の占有権を巡って敵対関係にあり、常にお互いの行動を監視し合い、一触即発の危険な空気となっています。

そんな中、中立地帯のダンス・ホールでマリアとトニーの二人は出会います。そして、ダンス・パーティーでお互いが惹かれ合った。しかし、マリアはシャーク団のリーダー、ベルナルドの妹、対してトニーはジェット団の前リーダーであり、現リーダー、リフの親友だったのです。二人の選んだ愛は危険なものだったのです。

そして、とうとう両グループは、衝突することになってしまいます。マリアは争いを止めようとします。トニーが両者の間に割って入るのですが、興奮している両者はトニーに耳を貸すことはありません。両グループは、リーダー同士の対決を始めます。

決闘の末、ジェット団リーダー、リフがベルナルドに刺され殺されてしまいます。親友リフを殺されたことで、今度はトニーがベルナルドを殺してしまいます。トニーは、逃亡することにしますが、シャーク団と警察に追われます。

正直、結局みんなが傷ついてしまって終わりを迎えるという、悲劇のミュージカル映画です。