この映画自体を観ていなくても、大雨の中で黄色いカッパを着てダンスをするシーンは、観たことがあるのではないでしょうか。『トップ・ハット』、『巴里のアメリカ人』などの代表的ミュージカル映画の傑作の一つがこの『雨に唄えば』です。

映画界の時代の変遷を描いたコミカルなミュージカル映画で、ハリウッド映画を代表する名作の一つです。特に大雨の中、主人公のジーン・ケリーがタップダンスを踊るシーンは、映画史に残る名シーンとして今でも色あせることがありません。

アメリカ映画協会が選んだミュージカル映画ベスト第1位に輝いています。主題歌はアメリカ映画主題歌第3位に選ばれており、映画そのものはアメリカ映画ベスト100において、第10位という輝かしい結果を残しています。文句なしの名作といえるでしょう。

経営学者のジョーン・マルケスは、この映画を鑑賞し、「雨を嫌うか、雨の中で踊るか、私たちは選択することができる」とし、困難な時期をすばらしい経験に変えることが人生において大切な技術であると説いています。

映画監督のメル・ブルックスは「天国のように素晴らしい。ミュージカル映画史上最高作品だ」と絶賛しており、この映画がいかに素晴らしく、後生に影響を与えているかわかります。その証拠に、映画『ザッツ・エンターテインメント』の冒頭では、この曲が紹介されるほどです。MGMミュージカル作品の象徴的な曲になっています。

主演は『踊る大紐育』、『巴里のアメリカ人』など多くのMGM作品で主演を務め、ハリウッド映画の黄金時代を築いたジーン・ケリーです。1952年には、アカデミー賞名誉賞を受賞しています。(同年には黒澤明監督も名誉賞を受賞しています。)

映画界はサイレント映画が花盛りの1920年代はアメリカそのものにとっても黄金期であった。ジャズやミュージカルなど、20世紀を代表する文化が生まれた時期でもあります。しかし、テクノロジーの進化はいつの時代にも文化にも反映します。

俳優のドン(ジーン・ケリー)と女優のリナ(ジーン・ヘイゲン)は、映画界のドル箱スターでした。やがて、世界で初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』が大成功を収めると、ハリウッドにも当然のようにトーキーの波が押し寄せます。

そこで映画製作会社は、ドンとリナを主演にした作りかけのサイレント映画を無理矢理トーキー映画にすることにします。ところがリナの声があまりにイメージとかけ離れていて、試写会は失敗に終わります。そこで、ドンの親友コズモが、リナの声を別人キャシーの声に吹き替えるアイディアを出したのです。

しかし、それを知ったリナは嫉妬と怒りでキャシーを表舞台に出られないように契約させます。やがて映画が完成し、試写会が催されます。ドンとリナの歌声に感動した観客は拍手喝采を惜しげもなく浴びせるのですが、思わずリナは自らの声でスピーチをしてしまいます。

あまりの声の違いに観客からリナへ、この場で歌を歌うように迫られ、リナはキャシーをカーテンの背後に隠して、観客の前で口パクで歌い始めるのですが・・・。

大手デパートなどでは、雨が降り出すと『雨に唄えば』のBGMを流すところもあるそうです。もしかしたら、日常で耳にしているかもしれませんね。