監督、脚本、主演をウディ・アレンが務めた、1997年製作のミュージカル・コメディ映画です。まずは、豪華なキャストに驚かされます。さすがは、ウディ・アレン、これだけの豪華キャストを集結させて、ミュージカルに挑戦させるとは!

主演のウディ・アレンは、長年の夢だったミュージカル初挑戦となります。その積年の思いがこもった野心作です。彼の功績をご紹介しましょう。アカデミー賞には、史上最多の24回のノミネート、監督賞(『アニー・ホール』)を1度、脚本賞を3度受賞しています。

日本では馴染みがない俳優ですが、ウディ演じるジョーの親友、元妻の現夫の役をTVドラマシリーズ『M*A*S*H』で11年間もホークアイ・ピアス役を演じてきたアラン・アルダ。彼がピアノ伴奏で、感動的な歌を披露してくれます。

日本では、あまり知られていない『M*A*S*H』ですが、戦場コメディで、最終回の視聴率は77%という驚異的な記録を打ち立て、アメリカでのテレビ史上、最も高い記録となり、未だに破られていません。

ジョーの元妻を演じるのは、80年代から90年代にかけてブレイクし、コメディ映画の出演が多かったオスカー女優ゴールディ・ホーン。ラストの川のほとりでジョーとダンスするシーンは、ヘタなSFアクションよりも素晴らしいものとなっています。

指輪ごとケーキを食べてしまうジョーの娘役に、『チャーリーズ・エンジェル』シリーズで、華麗なアクションで魅せてくれるドリュー・バリモア。婚約中なのに、危険な男性に恋してしまいます。

そして、その婚約者に『ハンニバル』、『真実の行方』で、主役を喰ってしまうほどの強烈な演技をみせたエドワード・ノートン。オープニングは、彼の歌から始まり、正直驚きました。宝石店でのステップは華麗とはいえませんが、なかなか観ることのできないシーンです。

ところが、このシーンは、エドワード・ノートンの歌とダンスがうますぎて、ウディ・アレンがもっと下手に演じるように指導したといわれています。その理由は、本作の彼は、どちらかというとダメンズの役だったからです。

本作が『真実の行方』と同じ年に製作されていたのにも驚きます。『真実の行方』で、あまり衝撃的なデビューをしましたので・・・、まだご覧になっていない方は、そのあたりを念頭にご覧ください。

そして、まだ少女のようなナタリー・ポートマンにも注目です。とってもキュートで、街を歩く男の子に一目惚れしてしまうのですが、フラれてしまい号泣しながら歌うシーンは、やはり大女優の予感を感じさせる演技でした。

当時すでに大スターだったジュリア・ロバーツも素敵です。彼女が映ると画像が明るく見えてしまうのは、そういう撮影なのか、それとも彼女のオーラなのか、とにかく華があるのです。そんな彼女も、ソロ・パートを与えられています。

さらに、仮釈放された凶悪犯役で、ティム・ロス。『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』でのワルのイメージそのままで登場するのですが、やっぱりワルでした。でも、しっかりソロで甘く歌う場面が用意されていて、女性をおとしていくのです。

主要キャストに必ずソロ・パートが用意されていて、全員が吹き替えなしの体当たりで演じています。とにかく映画の最初から最後まで、ずっと誰かが恋をしていて、恋に悩んでいる、素敵なミュージカル映画です。